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新型コロナウイルス感染症(3)-選ばれし者たちに告ぐ-

更新日:2020/04/14

   4月7日、安倍総理は改正新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく「緊急事態宣言」を発令しました。対象地域は感染が拡大している東京、埼玉、千葉、神奈川、大阪、兵庫、福岡の7都府県です。埼玉県民は永遠のライバル千葉と一緒に指定されて喜んでいるでしょう。逆に兵庫県は大阪府と一緒にされて嫌がっているとの話もチラホラ。
愛知県と京都府は仲間外れにされて悔しがっているようですが。

   そこで、新型コロナウイルス感染症に関して今までに分かっていることを整理し、正しい知識を知っていただくために急遽原稿を書いています。

   まず、この新型コロナウイルスの毒性はどの程度のものなんでしょうか?
コロナウイルスは家畜や野生動物に広く感染し、様々な疾患を引き起こします。人間界に存在するコロナウイルスは今まで6種類、最初の4種は人間に日常的に感染する風邪のコロナウイルスで弱毒性、風邪の10~15%はこれら4種のコロナウイルスを原因としています。5番目が2002年から2003年に流行したSARSで、8069人が感染し775人が重症肺炎で死亡しました(致死率9.6%)。6番目が2012年にサウジアラビアで報告されたMERSで、2494人が感染し858人が重症肺炎で死亡しました。当初致死率34.4%と言われていましたが、その後の大規模な疫学調査により一般のサウジアラビア人の0.15%がMERSに対する抗体を有していることから、何万人もの不顕性感染者の存在が知られました。現在では致死率10%ほどだと考えられています。この2種は強毒性ですが、幸い日本には入って来ませんでした。SARS、MERSは一旦発症すると症状が重篤で、海外へ渡航できるような状態ではなく、結局どちらも日本には入って来ませんでした。

   今回の7番目の新型コロナウイルスは強毒性、弱毒性どちらでしょうか?
結論から言うと弱毒性だと考えられています。ウイルスそのものの毒性は決して高いものではなく、阪神の藤浪投手のように嗅覚障害だけという人から、全く自覚症状のない方も多数存在するようです。乗員・乗客3711名全員のPCR検査が行われたダイヤモンド・プリンセス号では712名の陽性者のうち331名(46%)は無症状でした。高齢者が乗船していたダイヤモンド・プリンセス号でも46%の人は無症状ですから、一般の日本人では半数以上が無症状で経過すると考えられます。したがってウイルスの毒性は低く、いわゆる弱毒性です。しかし、この事実が今回の新型コロナウイルス騒動を大きくしている原因でもあります。高齢者でも46%は無症状ですから、若い年代では無症状の人はもっと多く存在します。彼らは活動的で行動範囲も広いので、あっと言う間に広範囲にウイルスを拡散させてしまったのです。つまり今回の新型コロナウイルスは弱毒性であるがゆえに、拡散スピードは恐ろしく早いということです。

   日本では4月6日までに国内で3569例の陽性が確認され、国内での死亡者は73例です。国内で初めて日本人の新型コロナウイルス感染症が確認されたのは1月28日、武漢からの観光客を乗せたバスの運転手さんでした。国内での日本人第一例確認から2か月以上が経つのに、死亡例が極めて少ないことが欧米諸国から「ジャパン・パラドクス」と呼ばれています。感染者数が少ないのは、新型コロナウイルス感染症を強く疑う人に限ってPCR検査をしているからで、日本政府・各自治体の方針は公衆衛生学に基づいた正しい対応です。「感染者数をごまかすためにPCR検査を制限している」などと主張しているバラエティー番組の馬鹿なコメンテーターは、国民のパニックを煽っているとしか思えません。現時点での日本の死亡者数は、人口100万人当たり0.60人で先進国では断トツに少ない数字です。イタリア、スペインは人口100万人当たり260人以上、アメリカは26人です(4月6日時点)。
では、これだけ死亡者数に隔たりがあるのはなぜでしょうか?3つほどの理由が言われています。

   一つ目は「日本もしばらくするとニューヨークのように感染者が爆発的に増加して、欧米諸国のようになる。今はアウトブレイクする直前だ。」という考え方です。政府、専門家会議も基本的にこの立場で対策をしています。でも少しおかしいと思いませんか?
日本で正式に新型コロナウイルス感染症が確認されたのは1月28日です。イタリア北部では昨年秋より原因不明の肺炎が流行していました。この時点でイタリアには新型コロナウイルスが持ち込まれていたと思われます。日本にも春節前から大勢の中国人が来日し、黒門市場・心斎橋を徒党を組んで闊歩し、マツモトキヨシ・ユニクロではしこたま買い物をしていました。日本は1月28日以降も中国、武漢からの入国を禁止していなかったので大量のウイルスが持ち込まれたはずです。いくら日本人がきれい好きでよく手を洗うとか、マスクをしている人が多いとか、自宅に帰ると靴を脱ぐとか、それだけでこれほどまで感染拡大スピードが低下し、死亡者数が減るものでしょうか?私はこの考え方に同意しかねます。

   二つ目は「日本には以前からこのウイルスが入ってきており、相当数の日本人がすでに抗体を持っていた」という考え方です。これは集団免疫と言われる現象です。新型コロナウイルスと同じ飛沫・接触感染のインフルエンザでは40%以上の人に抗体があればこの現象が起きると考えられています。しかしいくら中国人観光客が多い大阪、京都、東京、札幌などでも40%の人に抗体がすでに出来ているとは考えられません。

   三つ目は「日本人はBCGをしているから新型コロナウイルスに罹っても軽症で済み、死亡率が低い」という考え方です。一見突飛もない考え方のようですが、それなりの根拠はあります。アジアは結核患者が多かったので多くの国でBCGをしています。武漢から拡がっていったのにアジアは比較的死亡率の低い国が多いのです。日本、韓国、香港、シンガポールは感染者数も死亡者数も少ないのに、BCGをしていないイタリア、スペイン、アメリカ、フランス、イギリスではどちらも非常に多いのです。BCGの種類にも差があるようです。日本株を使用して現在もBCGをしているポルトガルは、パスツール株を使用し1981年から接種を中止したスペインより極端に死亡者数が少ない。イラクは日本株を使用し現在もBCGをしており、お隣のパスツール株を使用しているイランより死亡者数が少ない。人種的には同一のドイツを見てみると、ソ連株を使用していた東ドイツの住民は、デンマーク株を使用していた西ドイツの住民より感染者・死亡者ともに少ない。旧ソ連時代の東欧圏ではソ連株が用いられており、感染者・死亡者ともに少ないです。ちなみにフランス、イギリスはパスツール株、中国はデンマーク株を独自に培養した上海株で、イタリア、アメリカにはそもそもBCGのプログラムがありません。
ソ連・日本株のBCGは継代培養して毒性の落ちた結核菌培養液を皮膚に塗って、それをハンコ注射で皮膚内に感染させる生ワクチンです。生ワクチンには死菌ワクチンや成分ワクチンでは誘導できない細胞性免疫(キラーT細胞)を誘導する利点があります。キラーT細胞は宿主にとって異物であるウイルス感染細胞やがん細胞を認識して破壊します。「丸山ワクチン」という名前を憶えていますか?丸山先生は日本医科大学の皮膚科教授で、皮膚結核の治療薬として結核菌からの抽出液で丸山ワクチンを作成しました。この薬は皮膚結核の病変を改善する効果があったようです。同じ抗酸菌に属するらい菌で起きるハンセン病の皮膚病変にも効果がありました。ハンセン病患者の施設に通って治療している時に1000人以上いるハンセン病患者に癌の人がいないことに気づきます。そして結核患者で調べても癌患者が極めて少なかったので、結核菌に対する抗体が癌に対しても免疫活性を上げているのではないかと言う考えに至ったようです。同じような考えで阪大総長であった山村雄一先生もBCG-CWSと言う癌免疫療法剤を作られています。
身近なところでは泌尿器科で表在性膀胱癌の患者さんの膀胱内にBCG液を注入し、癌を死滅させる治療も良い効果を挙げています。どうもBCGには細胞性免疫を増強する効果があるように思います。日本では1951年に結核予防法が施行され、70歳以下の方はほぼBCGを接種しています。日本での死亡例が70歳以上に多いのもこれが一因であるかもしれません。腕のハンコ注射の跡が、黄門様の御印籠に見えてきませんか?

「この紋所が目に入らぬか! 頭が高い!」

ただこれは現在のところすべて傍証であり、オランダ、オーストラリアで開始された医療従事者へのBCG接種の臨床試験の結果が待たれます。

   緊急事態宣言が出されてから街はますます閑散としてきました。公園で満開に咲いた桜も観てくれる人が少なくて寂しそうです。来年は必ずお花見に行きたいものですね。
ではどうすればこの事態を乗り越えられるのでしょうか?今我々に出来ることは何なんでしょうか?

   まずはこの新型コロナウイルスに感染しないことです。娘は中学・高校のころ護身のために総合格闘技をしていましたが、道場で師範から最初に教わるのは「危ないところには行くな!危ないと感じたらすぐ逃げろ!」だったそうです。「君子危うきに近寄らず」です。
「3密」の場所に出来るだけ行かないようにしましょう。「断密」ですね(セクシーな壇蜜さんじゃないですよ)。
アメリカのCDC(アメリカ疾病予防管理センター)などは、「健康な人がマスクをしても予防効果はない」とマスク着用に否定的でしたが、決してそんなことはありません。今になって欧米諸国もマスク着用を推奨しています。花粉が飛ぶこの時期、無意識に鼻を触ったり、目をこすったりしてしまいますがそれを防ぐことができますし、何より自分がコロナに感染していると思っていない軽症者が他人にうつすことを予防できます。私は患者さんに「外出時にはサングラス、伊達メガネをしたほうがいいですよ」と指導しています。

   「布製のマスクの使用は逆に感染しやすくなる」などと言う中国のマスク業者の回し者のような人間がいるようですが決してそんなことはありません。口、鼻を触れない効果は確実にありますし、他人に飛沫感染をさせない効果もあります。布製マスクは毎日洗濯し、内側にティッシュペーパーを入れてそれを頻回に交換しましょう。

こまめな手洗い・うがいは必須です。日本人は結構されていると思います。その証拠に毎年1000万人の方がインフルエンザに罹りますが、今シーズンは400万人しか罹患していません。コロナのいい側面ですね。
ウイルスの居ないところで生活するのが一番ですが、今やコロナウイルスはどこにでも存在すると考えて行動しなければなりません。ウイルスが体内に入って来てもそれにいち早く気づき防御態勢に移れば、重症化してしまうことは避けられます。免疫機能を高めておく必要があります。早寝、早起き、日内リズムを出来るだけ壊さない、一日に20分ほど紫外線を浴びてビタミンDを活性化しておく、ラジオ体操やウォーキングなどで血液・リンパ液の循環を良くしてキラーT細胞を全身くまなく巡回させる、そして禁煙・節酒、以上を実践して頂けると生活習慣病も改善され、新型コロナウイルスでの重症化リスク因子である糖尿病や高血圧のコントロールもよくなってきます。

   我々は生まれてから今までに4つのコロナウイルスに打ち勝ってきた「選ばれし者」です。5番目のコロナウイルスに勝利しなければなりません。

   来年のお花見を皆さんと一緒に出来ることを!

松下 正幸

“May the Forse be with you !”

フォースと共にあらんことを

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