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新型コロナウイルス感染症(4)-コロナ防衛軍-

更新日:2020/04/27

 4月7日に「緊急事態宣言」が発令されて20日が経ちました。指定された7都府県、特に東京と大阪では感染者が急増しており、医療崩壊の危機としきりに報道されています。

3月10日頃までイタリア以外の欧米諸国では新型コロナウイルス感染者数は比較的抑えられた状態でした。それが急変してくるのが3月15日を過ぎたあたりからです。スペイン、ドイツ、フランスで急に増加し始め、突然ダークホースの米国が猛追、3月26日には先頭を走っていたイタリアを抜き去りました。そのあとは御存知のように一人旅を続けている状況です。

さて日本の状況を見てみましょう。新規感染者数は3月に入ってワンランクアップしていますが、20日過ぎまではほぼ横ばいの状態を維持していました。それが一変するのが3月26日です。この日以降新規感染者数は急カーブで上昇していきます。何が起こったのでしょうか?

 

 まず日本国内で日本人の感染が初めて確認されたのは1月28日、武漢からの中国人観光客を乗せた観光バスの運転者さんでした。これが武漢コロナウイルス第一波の始まりでした。それ以降徐々に感染が確認された人は増えてきましたが、いずれも中国人観光客が立ち寄った場所の日本人とその濃厚接触者でした。観光客の行動範囲はほぼ予想でき、突飛もない場合には行くことはありません。だからクラスターが発生してもそこを一つずつ潰していくことで感染抑制が可能でした。

 3月9日からは中国・韓国からの入国制限が遅まきながら始まりました。そして欧米の感染者数が急増してくると、政府は3月21日から欧州からの入国制限を開始しました。翌22日には、米国からの渡航者にも26日から入国制限すると発表しました。このため3月中旬から、海外駐在員とその家族、留学生、旅行者などが欧米諸国から大挙して帰国しました。彼らは帰国時に羽田空港、成田空港、関西空港等で検疫を受けますが、自覚症状がなく発熱していなければほぼスルーで入国し、翌日からは日本人としての日常生活が始まります。これが観光客と大きく異なるところです。その人たちが潜伏期間を終えて発病しだしたのが3月26日頃からではないかと思います。これが武漢コロナウイルス第二波です。

 では4月に入り急速に増加している感染者は海外からの帰国者だけなのでしょうか?厚生労働省の新型コロナウイルス、クラスター対策班の調査によると「10人の感染者がいると、そのうち8人は他人に感染させていないが、残り2人がひとり5~10人に感染させていた」そうです。そしてクラスターが発生するのは「マスクを付けない」「3密」の条件を満たす場所である事も分かってきました。具体的にはどんなところでしょうか?絶対にマスクを外す場所、飲み食いする場所です。ちょうど企業、大学などの歓送迎会が多い時期でした。大人数で大声で会話して宴会をし、二次会でカラオケに行ったのでしょう。ここからは私の想像ですが、新型コロナウイルスの感染拡大地域から帰国した駐在員は本社に出向き状況を報告したでしょう。「ご苦労さん、今夜一杯飲みに行こう」と帰国者をねぎらうために夜の街に繰り出したのではないかと思います。そこで感染させました。夜の街が好きな人や接客してくれる女性に感染させたため、夜の街が好きな人にどんどん感染が拡がったのでしょう。東京都の感染者マップを見てみると新宿区、港区、渋谷区、品川区などの大きな盛り場のある地区、大企業の方が多く住んでいる世田谷区、杉並区などにコロナ感染者が多いようです。東京都の職員の方が「感染者に聞き取り調査をしても詳しくお話が聞けない」と嘆いておられましたが、話せないような所に行ったんだと勘ぐってしまうのは私だけでしょうか。立憲民主党の高井議員のように「緊急事態宣言以降、夜の街がどうなっているのか調査に行った」勉強熱心な方もおられました。この方は自身のツイッターで「夜の街にも休業補償が必要だ」などと書き込んでおられ、自腹を切って東京都より迅速に個人的に所得補償してあげたようです。外出自粛要請がされている時期に個人的に所得補償しに行く輩が多いのは困ったものです。

 普通にマスク、出来れば眼鏡も付けて電車で出勤し、会社に着くと手洗い、うがいをしてから仕事を始め、昼食を摂る前にはしっかり手を洗い、盛り場にフラフラと寄ることなく帰宅したらすぐに手洗い、うがいをして夕食を摂り、ゆっくりとお風呂に入り体を温め、12時までには床に就き、早めに起きて紫外線を浴びながら30分ほどお散歩をする、こんな生活をしている人はまずコロナに感染することは無いのです。

 先日夜の情報番組で、スーパーでマスクを付けていてもくしゃみをすると、その飛沫の一部が陳列棚を超えて隣の通路にまで飛んでいく映像を流していました。いかにも「スーパーの店内は危ないですよ」と言わんばかりでした。満員電車で通勤している人が簡単にコロナウイルスに感染するのなら巨大都市、東京は今頃ニューヨークの比じゃないくらい感染者であふれていたでしょう。でも考えてみてください。我々は今回の武漢コロナウイルスが流行するまで無菌室で生活していたのでしょうか?この世界は無数の細菌やウイルスに満ちています。その中には間違いなく我々の知らない未知のウイルスもいるでしょう。我々はその中で今まで生き抜いてきたのです。武漢コロナウイルスが数個付いた手で鼻を触った、それが口に入った、そんなことで武漢肺炎になり命を落とすのでしょうか?もし数個のウイルスの侵入で感染が成立し重篤な病気になるのなら、とっくに人類は消滅していたでしょう。

 ウイルスや細菌の攻撃に対して人間の持っている何段階もの防御の仕組みを説明しておきましょう。

 ヒトの鼻から上気道、肺へと続く粘膜には「線毛」という細かい毛がびっしりと生えていて、線毛と線毛の間にはサラサラとした「線毛間液」があり、そして線毛の上には「粘液」が層をなして存在します。線毛は1秒間に約15回という速さで小刻みに動き、喉に向かって一定の流れを作っています。鼻や口から入ったウイルスは気道粘膜上の粘液に絡み取られて咳や痰と一緒に体外へ排出されます。これが呼吸器系の第一の防波堤です。

 この防波堤を乗り越えて肺の奥にまでやって来て、受容体を介して肺の細胞内に侵入したら感染成立です。感染したからと言って病気になって発病するわけではありません。

 ウイルスに感染した細胞に最初に攻撃をかけるのが「自然免疫」という第二の防衛システムです。これを担っているのが白血球、マクロファージ、樹状細胞そしてNK細胞(ナチュラルキラー細胞)というチームです。米軍で言えば海兵隊のようなものでしょうか。彼らは感染し障害された細胞をいち早く発見し、局所で攻撃を仕掛ける最前線の精鋭部隊です。通常はこのレベルの局地戦で勝利することが多いのです。だから細菌やウイルスであふれているこの世界に住んでいても、1年に数回しか感染症にならないのです。しかしいくら精鋭部隊でも相手があまりにも大群(大量のウイルスに暴露された時)だったら防衛しきれなくなります。

 ここで出動してくるのが「獲得免疫」という第三の防衛システムです。獲得免疫には二つの部隊があります。一つ目は「細胞性免疫」で、海兵隊を引き継いで局地戦を戦う大規模な地上軍です。二つ目は「液性免疫」と呼ばれる「抗体」という爆弾を積んだ爆撃部隊です。獲得免疫は強力ですが、隊の編成に数日から2週間の時間を要します。ここまで戦いが大きくなると犠牲者も出てきてしまいます。

 以上が我々に装備された感染症に対する防衛システムです。ここまで読んでいただいた方は、武漢コロナウイルスに対する防御方法がわかってきましたね。

 

1)君子危うきに近寄らず

そもそもウイルスに大量暴露されるようなところには行かない。

2)マスク、眼鏡(サングラス、伊達メガネ)をする

これで暴露されるウイルス量を減らすことができ、他人への感染も防げます。また手に付着したウイルスを体内への入り口である鼻・口・目にもっていかない。

3)頻回に手洗い、うがいをする

もしウイルスが身体に付着しても体内に入ることを防ぐ。

4)免疫力を高める生活をする

ウイルスが体内に入り感染が成立しても局地戦で勝利するように、免疫力の保持、増強に努める。そのためには早寝、早起き、日内リズムを変化させない規則正しい生活、ビタミンD活性化のために紫外線を浴び20分ほどお散歩をする。適度な運動は血液循環を良くし、自然免疫を担うNK細胞等の巡回頻度を高め、早期警戒体制を敷くことが出来ます。

以上の4つは我々の防御対策でしたが、ウイルスの毒性そのものを弱める作戦も実は存在します。

5)武漢コロナウイルスの弱毒化を待つ

RNAウイルス(コロナウイルスはRNAウイルスです)は、高頻度に突然変異を起こします。その中には毒性の強いもの、逆に毒性の弱いものも出てきます。毒性の強いウイルスに感染した人はどうなるでしょうか?重い症状が出現した患者さんは、医療崩壊を起こしていない状況では、入院し隔離され厳重な監視下に置かれます。幸いに回復すればよし、不幸にも亡くなられたら遺体は火葬になります。どちらの場合もウイルスは多くの人に感染することなくこの世から消え去ります。ウイルスになったつもりで考えてください。どうすればこの人間社会に長期にわたり広範囲に存在し続けることが出来るでしょうか? そうです!! 弱毒化することです。感染したことを気づかせず、普通に生活ができるほど症状を軽くし、感染者に社会生活を続けさせ、感染を拡大させることです。現在人間界に存在する4種類の風邪のコロナウイルスも、この作戦で人知れず存在し続けて来ました。時が経てばウイルスは必ず弱毒化を果たしたものが優勢になるのです。今日よりも明日、明日よりも明後日、今年よりも来年、感染するのを先延ばしすればするほどウイルスは弱いものになっていきます。

今回の武漢コロナウイルスも例外ではないと思います。ただ不幸なことに現代はグローバル化した世界になっています。十分な医療を受けられない昔、風邪のコロナウイルスは人里離れた田舎の村に入り込みました。村人の半数近くは亡くなりましたが、隣村にそのウイルスが拡がるまでに相当の時間を要しました。ましてや日本にやってきたのは何年も後のことだったでしょう。しかし現代は1月の春節前に出現した武漢コロナウイルスが、弱毒化を果たす前に世界中に拡がったのです。

感染を先延ばしにすれば有効な治療薬が開発されるでしょうし、ワクチンも出来るでしょう。まずは5月6日まで不要不急の外出は控えて、上記の5つを守ってください。

 我々は決して丸腰ではありません。自分の免疫力を信じ、やみくもに怖がらず、細心の注意を払って生活してください。

松下 正幸

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