松下医院よりご挨拶院長よりひとこと

新型コロナウイルス感染症(5)-コロナ禍の熱中症対策-

更新日:2020/05/25

 政府は、今夜にも新型コロナ特措法に基づく緊急事態宣言を大阪、京都、兵庫の近畿3府県で解除する方針のようです。また少し普段の日常が近づいて来るのかと思うと嬉しくなってきますね。毎年ゴールデンウィークが終わる頃には半袖姿の人が多くなりますが、今年は暖かくなるのがゆっくりで、やっと暖かくなったかと思ったら雨が降りまた肌寒くなるという繰り返しでした。でも関西では緊急事態宣言が解除される頃には夏日が訪れるようです。因みに夏日は最高気温が25度以上、真夏日は30度以上、猛暑日は35度以上を言い、熱帯夜は最低気温が25度以上を言うようです。

 さて、これから熱中症の季節になります。人間は生きているだけで体内で熱が産生されています。運動をしたり作業をしたりすると産生される熱量はどんどん増えていきます。我々はこの熱を常に体外に放出し、一定の体温(深部体温はほぼ37度)を維持しています。この体温調節機能が破綻し、体内に熱がこもって体温が上昇してめまい、筋肉痛、頭痛、吐き気、倦怠感、けいれん、意識障害などの症状が出てくるのが熱中症です。最悪死に至ることもあります。

 我々には体温を下げる方法は3つあります。

 一つ目は物理的に下げる方法です。極端な話、水風呂に入れば体温は下がります。北欧の国では風邪をひいて熱が出た時など水風呂に入るようです。

 ちなみに日本では風邪の時にはお風呂はダメと思われていますが、これは貝原益軒が「養生訓」の中で言っていることです。江戸時代庶民は銭湯に行きました。よほど裕福な家以外は銭湯に通っていたようです。江戸の街では毎日のようにどこかで火事が起こり、人々は火事を恐れて家で風呂を沸かさなかったようです。当時風呂は混浴でした。これも浴槽を二つ作ると焚き場も二つになり、火事のリスクが増えるからだと言われています。江戸には100万人以上が住んでおり、ロンドンの86万人、パリの54万人をはるかに凌ぐ人口でした。人口密度も半端なく1平方Km当たり6万人、2015年日本で一番人口密度が高かったのは豊島区の1平方Km当たり2.2万人ですから、ほぼ平屋建てだった当時はまさに芋の子を洗う状態で生活していました。当然木造建築ですから火事も多く、規模も大きかったのです。話が違う方向に行ってしまいましたが、要するに江戸時代は、お風呂は銭湯に行って入るものだったので、帰り道で身体が冷えてしまうから「風邪の時には風呂には入るな」となったのだと思います。しかし内湯が多くなった現在、風邪の時にお風呂に入ってはいけないことはありません。ただ、お風呂に入ると疲れるので、あまりに体がだるい時にはやめておいた方がいいかもしれません。話を戻して、体温を物理的に下げる現実的な方法は冷房を入れることです。お年を召された方は暖かい方が安心するのか、「冷房は嫌いだ」とエアコンを切って暑い部屋で生活されている方が結構いらっしゃいますが、非常に危険です。

 二つ目は汗をかいて、その汗を蒸発させ気化熱を奪ってもらう事です。これは周囲の環境に影響されます。あまりに湿度が高いと汗は出ても蒸発しないので、体温は下がりません。エアコンを入れて部屋の湿度を下げるか、扇風機で体に風をあてて体表の湿気を飛ばし蒸発出来る状態を作ることです。この方法は汗が出ないと話になりませんので、水分摂取が必須になります。

 三つ目は呼吸です。我々は呼吸をする時、ほぼ体温と同じ37度の息を吐いています。そして私の診察室なら今エアコンを25度に設定していますから、25度の空気を吸い込みます。呼吸をすることによって熱交換を行っている訳です。これは吸い込む空気の温度によって効率が変化します。

エアコンは室温を下げて物理的に体温を下げ、湿度を下げることによって汗の蒸発を助け、吸い込む空気の温度を下げて熱交換効率を上げています。一石三鳥の働きをしているのです。

 コロナ禍ではどのような状況になっているでしょうか?

 マスゴミの脅しに踊らされた人々は炎天下の公道を歩く時にもマスクを付けています。これでは37度の息を吐いて、マスク内の37度に近い高い温度の空気を吸い込むことになり、呼吸で体温を下げることが難しくなります。

 コロナウイルスに限らずウイルスは紫外線に弱く、武漢コロナウイルスは紫外線によって2~3分で感染力が無くなると報告されています。また換気が推奨されているように、コロナウイルスは風で2mも吹き流されると感染力が無くなると言われています。昼間の屋外ではこの二つの条件がそろっているので、コロナウイルスの感染者が貴方の鼻先でくしゃみでもしない限り感染することはありません。これから気温も湿度も上がってきます。屋外ではコロナの心配より熱中症を心配しましょう。コロナに罹らなくても熱中症で亡くなったら笑えない話です。お買い物などで屋内に入る時、屋外でもお友達と面と向かって長話をする時にはエチケットとしてマスクは付けましょう。

 もう一つマスクをしていて気になることがあります。それは水分摂取量が減ることです。私は今まで一人患者さんを診ると一口お茶を飲んで口腔内を湿らせていましたが、マスクをずらしてお茶を飲み、またマスクをするという動作が面倒なのか、お茶の減り方が明らかに少なくなりました。皆さんはいかがでしょうか?オフィスでマスクを付けて仕事をされている方もそうではないですか?省エネでオフィスの室内温度は近年どんどん上がる傾向にありますが、今年は少し涼しくした方がいいかもしれませんね。

 もし今回のコロナウイルスが賢ければ、ワクチンが出来て治療薬が開発されても、このウイルスが人間世界から消えてなくなることありません。インフルエンザウイルスのように。弱毒化して5番目の風邪のコロナウイルスとなるまでは用心しましょう。侮ってはいけませんが、必要以上に恐れすぎて熱中症になったのでは意味がありません。

 次回は感染予防の肝を書いていきたいと思います。

松下 正幸

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